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2章:〜サボテン教〜
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結希は私を引っ張って、トイレの在るツイタテの影に連れて来た。
〔ちょっと、あんた正気なの?!何がジョニーにエミーよ!ただのサボテンに何やってんの?!〕
〔でも、何だか面白そうじゃない〕
私がそう言うと、結希は飛んでも無い発想をした。
〔あのね、宗教かも知れないんだよ!っつか、絶対宗教だよ!〕
〔宗教って何の宗教よ〕
〔サボテン教〕
〔……………〕
私が呆れてカウンターに戻ろうとしても、握った服を放さない。
〔待って!きっと今煎れてる紅茶や、出されるクッキーにだって絶対薬が入ってるって!ヤバいよ!〕
〔薬?〕
〔そう!洗脳薬!口にしたら、猫にマタタビ状態になるよきっと!ね、警察行こう!〕
やれやれ。
『お客さん、そろそろ紅茶入るよ〜クッキーも食べてねぇ』
マスターが相変わらずのテンションで声を掛けて来る。
〔紅茶入るって、席に戻ろう〕
私がそう言っても、結希はまだ服を放さない。
〔あんだけの人間なんだよ!紅茶とクッキーでヘロヘロにして、黒魔法に掛けるつもりなんだよきっと!やっぱり警察行かなくちゃダメだよ!〕
結希は真剣だ。
〔警察に行って何て言うの?〕
そう聞くと
〔勿論事実を打ち明けるのよ!告発するの!!〕
告発???
〔何て告発するのよ〕
〔だから、サボテン教の教祖に洗脳されて、黒魔法を掛けられそうになりました!って言うの!わかった?!〕
〔……………〕
私にはどう考えても、この♀の方が怪しく思えて来た。
『お客さ〜ん、お茶とクッキーどうぞ〜』
〔ほら!しつこく勧誘してる!〕
〔……………〕
『はぁ〜い、今行きま〜す』
〔ダメ!黒魔法!〕
〔結希!行くよ!〕
私はそう言うと、服を掴んだ結希の腕を持って、カウンターに引っ張った。
『今日のお茶にはシナモンがお勧め!良かったらどうぞ〜』
そう言って、シナモンの入った硝子の小皿をカウンターに置く。私がそれを紅茶に入れ様としたその瞬間、
〔りぃ!それマタタビ!〕
結局、この日以降、結希がこの店を訪れる事は無かった。友情破壊に迄はならなかったが、この店を私が訪れる度に、一度病院で血液検査をする事を奨め、挙げ句心理テストに余念が無くなった。
友達と言うのは、有り難い限りである。
そう自分自身に言い聞かせる事にした。
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