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2章:〜サボテン教〜
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実に判り易い所に在り、実に判り難い店だ。そもそも名前が無いと言う事は、誰かに尋ねるにしても、尋ね様が無い。が、いつものバス停の真ん前に在ったなんて、全然気づかなかった。
〔取り敢えず、普通のお客の振りして行ってみて。マスターがどんな人か判るから。
それで空気が合う様なら、私に言って。私からマスターに紹介するから〕
そうチャコに言われ、私は結希を伴って、この喫茶店に来た。
『本当に名前無いんだね』
結希が店の入り口や入り口の上の辺りをまざまざと見つめて言う。
『うん、そうみたいね』
どう見ても、ただ、小洒落たレイアウトの出窓のある、何の店だが判らない店。
『取り敢えず入ってみる?』
そう言いながら、結希がドアを開ける。
入り口は二重扉になっていて、外側の扉と内側の扉の狭いスペースにはイーゼルがあり、そこに焦げ茶色に塗られた板があり、白い文字で何か書いてある。
―――――
お喋りなサボテンと、魔法の焼き菓子
見える人と聞こえる人
感じる匂いもその風も
その不思議は不思議じゃないよ
みんなみんな真実さ
―――――
『………』『………』
意味判らん。
私と結希は顔を見合わせて暫し絶句。
『ね、チャコ先輩が言ってた喫茶店って本当にここなのかな?』
『さぁ………』
そして二人とも、またそのボードを見る。
と、その時だった。
『やぁ!よく来てくれたねぇ!今クッキーが焼き上がったばかりなんだよ!』
いきなり内側のドアが開き、ヤケにハイなその声に、二人とも
《キャー!》
と思わず黄色い声を上げ、抱き合った。
『どうしたの?また、僕の後ろに何か憑いてるのかな?さっき迄狐が居たけど、もう帰った筈なんだけどな』
そこには少し日焼けした、小太りの40代位の男が居る。
狐と聞いたのがいけなかったのか
『りぃ!狐、狐居るの?!私、もう無理かも!』
結希が更に私に抱き着いた。
『ちょっと、結希、もう居ないって、もう帰ったってさ!』
そう私が言うとその男は
『うん!今はもう帰ったよ〜、でもまた来るよ〜』
と楽しそうに言いながら
『今日一番のお客さん、好きなお席にどうぞ〜』
そう言って、私と私にくっついた結希を、店内に招き入れた。
その店は、カウンターが五席、そして中央に円いテーブルが在るだけだった。
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