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1章:ピアノ弾いたのだぁれ?
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マグレで入った某音大。とにかくマグレなのだから、せめて授業に着いて行く事にだけは専念しなくちゃ!
私は生れつき手が小さいから、本当はピアノに向いてない。
そんな事は百も承知で受けたら、何故か受かっちゃった。
通い学生。家からこのキャンパス迄片道約2時間半。一人暮らしを申し入れたが、両親はアッサリ却下。確かに、ピアノを持ち込めるマンションなんてそうそう無いし、在ったとしても弾くわけにもいかない。
仮に防音システムの有るマンションが見つかっても、家賃を考えたら一体幾らになる事やら。
と言う事で、通い学生。
勿論、他の学友達も、似たり寄ったりの家庭環境だし、私一人が苦労してるわけではなかったのだが。
教授のレッスンを受ける時には、やはりレッスン前の指馴らしは不可欠。朝は1番列車での登校なので、前日の夜迄しかピアノを触ってない。このままの状態でいきなりレッスンに入りたくない。
そんな学生達の為に、キャンパスの墨に練習室が設けられていた。その校舎の1階と2階には、沢山の小さな部屋が並び、中にはピアノが一台ずつ置いてある。1階の部屋にはグランドピアノが置いてあったのだが、私達下級生は、2階のアップライトの部屋を使っていた。
まだ、入学したばかりの頃。キャンパス内の地図も頭に入って無かったのだが、学友三人と一緒にその練習室のある北棟に行った。一通りの指馴らしをし、1時間位で終わらせ、レッスンルームにやって来たのだが、テキストが一冊見当たらない。
『あ、置いてきちゃったみたい』
鞄の中をを何度も探したが、やはり見当たらない。
『さっきの練習室?』
結希にそう聞かれて頷く。
『あんた、場所分かる?何なら私付き合おうか?』
彼女には二つ年上の姉が居て、その姉、真希もここの学生だった。だから、このキャンパスには割と詳しい。
しかし、結希の方が早くレッスンに入るので、付き合わせる訳にもいかなかった。
『大丈夫、一人で行ってくる』
そう言うと、私はまたあの練習室の並ぶ北棟にむかった。
北棟はもう古い建物に手を加えただけの簡素な建物で、一見すると、古い診療所。その入り口には記載台があり、利用者は自分の学部と学年、名前、使用する部屋の番号と入退室の時間を記載するのだが、忘れ物を取りに来ただけなので、記載せずに通り過ぎた。
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