5章:〜ミサト〜 (5/6)

【俺さ、ここの京子さんに拾われたんだ。家出して行く所なくてウロウロしてたら。だからこの店に入ったんだけど、やっぱ無理だわ】

そう寂しそうに言う。

【こんな見掛けだから、客ウケがいいって言われても、他のヒト達みたいにできなくてさ】

【どうして家出？】

【俺は、両親の子供じゃないからね……今の親父の不倫相手の連子。俺の母さんは、今の親父の患者だったんだ。ずっと母子家庭だったみたいだけど、母さん死んじゃったから】

そんな話しを聞きながらふと犬を見ると、おやつも無いのにお手やお代わりや、伏せ等の芸当を繰り返してる。

普段おやつが無かったら絶対にやらないのに。

【あれ？プータロ、あんたおやつ無いのに何してるの？】

すると彼は

【犬は一度覚えた事を忘れないよ。おやつはあまり関係ないんだ】

そう言った。