会社から真っ直ぐ歓楽街に向かった私。

通勤着のスーツにパンプスという明らかに会社員という姿でお店に向かった。

この時の私は本物の会社員だったから、自分の姿格好を気に留める事もなく、会社員だからスーツを着て当然だと思っていた。

それから何年か後に、店のコンセプトで『会社員の人妻』という設定で用意されたスーツを着てお客さんと待ち合わせをしなければならなかった時、町を歩く本物の会社員の姿格好と自分とを見比べて虚しく思った。

会社で働くにしては短くてピチピチ過ぎるペラペラな生地のスーツに、通勤するには高過ぎるヒールに、オプションの玩具とタイマーとローションと髪止めが入った小さなバッグ。

私は会社員を装った風俗嬢、この姿のまま風俗御用達の待ち合わせスポットに行ったらバレバレじゃん。

なるべく、
なるべく、
なるべく、

風俗嬢に見えない様に、

他店の子から私が風俗嬢だと見破られない様に、

姿格好や待ち合わせスポットで風俗嬢を見破る男性達に気付かれない様に、

私が風俗嬢だと悟られない様に、

風俗嬢のくせにそんな事を常に気にしながら働いていたな。