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5章:送り (1/3)

5章:送り


移動してからようやく落ち着いてお酒が飲めるようになった。
隣には陽菜がいるし、さっきまでの不安はどこかへ消え去った。




楽しく話していて、気がつけば朝の6時。
わたしは仕事があるのを思い出して、絆に帰ることを伝えた。

「え、彩もう帰るん?」

『今日朝から仕事で…。』

「そーじゃん!彩電車間に合う?」

わたしが仕事ということをようやく思いだした陽菜は電車の時間を確認してくれる。

「あ、34分があるよ。それ乗ったら間に合うんじゃない?」

『ほんと?ありがと。ってことで、そろそろ帰らなきゃ…。』

わたしは隣の絆を見上げる。

「ん、わかったよ。」

『ごめんなさい…。』

「ん?ええよ、気にしんでも。あ、会計終わったら店の中の誰か一人を送り指名できるんやけど、それ俺選んでくれたら嬉しい。」

さりげなく送り指名をもらおうとする。
そのさりげなさが営業だということにこの頃のわたしは気づかなかった…。

『うん、じゃあ聞かれたらそうするね。』

そう言うと、絆は席から離れていった。

絆が離れて少しして、リーダーの月がファイルを持って隣に座る。

「失礼します。お会計でよろしいですか?」

『あ、はい。』

「本日のお会計が5000円なんですが、メール会員にご登録いただくと2000円offの3000円となります。ご登録なさいますか?」

そんな事を聞かれてわたしはすぐにメール会員に登録して3000円を支払った。

「では、最後に送り指名は誰にするか決まりましたか?」

『えっと、』

頭には絆の言葉。

『絆、さんで。』

「わかりました。少々お待ち下さい。」




この時、別の誰かを送りに指名していたらわたしはエースにならなかったかもしれない。


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気がつけば「エース」になっていた少女 ©著者:Color Flower

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