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1章:出会い (11/11)


店を出て
「てっきり疲れてんのかと思ったよ」


と彼女に言うと


「疲れてるよ?
でも誰かといるときが
人生で一番楽しいもん
疲れなんて忘れちゃう」




俺は彼女の言葉が指す"誰か"が
抽象的な意味だと
解っていたが
彼女が俺と居て楽しかったなら
俺はそれだけで満足だった




駐車場で2人並んで
煙草を吹かす

小柄な彼女がしゃがみ込むと
まるで本当に猫のようなのだ


「ねぇ、君も本当の名前
教えてよ」


俺が顔を覗き込み尋ねると


「これ」

彼女は呟き煙草ケースを指差す


またもや俺は意味が解らず
ハテナ、という顔をした


「奈々だよ」




あぁなるほど

彼女の吸っている煙草には
パッケージに煙草の銘柄である
数字の"7"が書かれていた





話せば話すほど
不思議な子だと思った




「これからどうする?」
と聞くと
「あたしはタクシーに乗る」
と言って
道端のタクシーを一台捕まえ
「またね」
と言い残してどこかへ
行ってしまった


俺は呆気にとられ
立ち尽くしていたが
ヘルメットを被りバイクにまたがる
またふっと笑いがでた




"野良猫奈々ちゃんは
今夜はどこのご主人様のもとへ
帰るんだろう"





誰かの腕枕で寝息を立てている彼女を想像すると
悔しさと切なさが込み上げた
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野良猫 ©著者:R

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