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12章:クロワッサンの秘密 その3
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「どうした?またニヤニヤして」
「ニコニコと言ってったら!もう」
『ヌーヴォテ』の調査員の訪問の余韻が未だ覚めぬ中、軽口を叩く零人に言い返しながらも、こむぎは顔の表情が緩むのを抑えられなかった
二人の調査員が『クシネ』のクロワッサンを手放しで褒め称えたのは、もちろん一番嬉しい
しかし、今、こむぎの頬を緩ませているのは、彼らが帰りがけに、こむぎが入れたホットドリンクに賛辞を送ったからだった
「日本でこんな本格的なショコラショーを味わえるとは驚きです。フランスやベルギーでもなかなか出会えない美味しさでしたよ」
とヤマモトは言い
オルタンスも
「あの美味しいクロワッサンが、あなたの飲み物で、更に引き立ってたわ。エリゼ宮にも、あなたのように美味しいカフェオレを入れてくれる人がいれば、私はもっと楽に仕事が出来たのに」
と満更冗談じゃない様子で、こむぎの飲み物を作る手腕を称えてくれたのだ
(嬉しい…本当に嬉しい…)
(外部の…しかもプロの人たちが、あたしの飲み物を認めてくれた…)
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