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9章:新装開店 その2 (8/8)

夜になっても賑わいは続いた

こむぎが考えた、その日のディナーのお薦め料理はチーズ・フォンデュ・コロッケだった

フレンチ風のクロケットではなく、味わい深い男爵イモとトロトロのモッツァレラチーズがマッチした、揚げたてのレトロ洋食風のコロッケは多くの客に好評で、その日のグラスワインの赤、モルゴンのクリュ・ボージョレにもよく合った

料理やワインと共に絶賛を浴びたのは、やはりパンだった

零人特製のディナー・バタールがまだ温かいうちに木のプレートに乗せられて客に出されると、皆、笑顔でプレートをパン屑だらけにしてナイフを使い、切り取ったパンの皮の香ばしさと、中身の絹の様な口当たりに驚くのだった

「美味しいパンのための料理!」

「美味しい料理のためのパン!」

称賛の声は厨房のこむぎへも届き、彼女は浮き立つ心を抑えながらフライパンを振るった

そして慌ただしかった初日が終わり、こむぎが美晴と敏を労っていると、工房から顔を出した零人も初めて笑顔を見せた

「まずは大成功と言ってもいいだろう。でも本当の勝負は明日から」

零人は一同に言い、こむぎはワインをグラスに注ぎ、全員に振る舞う

「乾杯しようよ!皆で」

「乾杯!」

「乾杯!今日と明日のパンに!」

「今日と明日の成功に!」

皆の唱和が快い疲労感が漂う店内に響き、笑いが弾けた


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朝いちばん早いのは ©著者:黒蝶少年

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