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9章:新装開店 その2 (2/8)

店を訪ねて来たのは伊海美晴だった

「だいぶ出来て来たわね。床もテーブルもカナダのカエデ材なんて素敵、明るくていいわ」

「久しぶりだね…」

内装工事の様子を見渡しながら店に足を踏み入れる美晴に対して、こむぎは少し警戒気味だった

何と言っても零人を先にスカウトしたのは美晴の『ミッシェル・ルソー』なのだ

しかし、美晴は警戒を崩さないこむぎの様子に吹き出し、笑い出した

「誤解しないで。もう、貴島さんを誘ったりしないから。今日は別の用件で来たのよ」

「別の…用件?」

にこやかに笑う美晴に、ややホッとしながら、こむぎは尋ねる

「ええ、こちらではホールスタッフを募集してるでしょう?」

「うん、そうだけど…」

「パン工房は貴島さんがひとりで切り回すの?」

「本人はそのつもりみたいだけど、あたしは、出来ればサービスの合間に、工房の方も手伝える人が来てくれればいいな、と思ってる。パンを作れる職人がひとりだけとなると…」

「…何かあったら少し大変よね。『ナイツ・ウォッチ』のママにもそう聞いたわ。だから今日、来たの」

「え?…」

こむぎは全く話が読めない

「だから雇ってもらいに来たのよ、私」

「だって…『ミッシェル・ルソー』は?…伊海さんって、スー・シェフなんでしょ?」

「当然、やめて来たわよ」

唖然とするこむぎの前で、伊海美晴は艶然と微笑んだ



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朝いちばん早いのは ©著者:黒蝶少年

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