23章:二人の関係 (6/6)

わたしはあの人の店に通っていたし、店にとって太客といわれるくらいのお金を使っていた。

一緒に住んでいるわけでなかったし、体の関係があるわけでもなかった。

他人から見たら『ただの客』。

でもわたしと彼の間には、人と人としての繋がりが確かにあった。

わたしってなんだろうって不安になることがなかった訳じゃない。

あの人のことが本当に好きだったから。

でも、その不安を彼にぶつけることもなかったし、関係性を明確にしたいと思ったこともなかった。

わたしはただの客。

それでもわたしたちの間には、信頼関係が確実に築かれていった。

わたしは今もそう信じている。