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20章:失ったもの (3/5)

「ただいま」

彼が帰ってきた。

今日は少し酔ってるみたいだ。

ソファーに座る彼にいろはすを渡す。

「お味噌汁飲む?」

「うん。腹減ったー」

野菜のたくさん入った味噌汁をどんぶりに入れて出す。

それももう日課になった。

「そうだ!ゆうちゃん、これ」

ポケットから片方だけのピアスを出す。

お気に入りだったピアス。

知らない間に片方なくなってた。

「なくしたと思ってた」

「気に入ってたでしょ。落ちてたよ」

「ありがと」

わたしはピアスをよくなくす。

まるで消耗品のように。

「大事なものは大事にしてないとなくなっちゃうんだよ。大事と思ってても、大事にしないとなくなる」

「うん」

なんだか彼の言葉が重たく感じて、頷くことしかできなかった。

彼のことは大事に思ってる。

でも大事にできてるかはわからない。

彼はわたしを大事にしてくれる。

でも大事に思っているかは、わたしにはわからない。

「今夜飲みに行ってもいい?」

「いいけど・・・どうしたの?珍しいね」

「たまには外で飲みたいなって思って」

「じゃあ少し早く出て、たまには外で飯食うか!」

大事にするってどういうことだろう?

小さい頃、大好きなミルキーの大玉が出たことがあった。

嬉しくて、大事に大事に握りしめて、ポケットの中でも握りしめて離さなかった。

ミルキーは手の中で溶けて、包み紙にひっついて、食べられなくなった。

ふとそんなことを、思い出した。
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幸せってなんだっけ? ©著者:M

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