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16章:長い夜 (1/11)

16章:長い夜

わたしたちは少し離れたところではす向かいに座った。

「とりあえず退院おめでと。体調は大丈夫?」

「うん。もう全然大丈夫だよ」

沈黙が続く。

彼が買ってくれたペットボトルのお茶を一口飲むと、同じタイミングで彼も缶コーヒーを飲んだ。

同じタイミングで飲み物をを床に置いた瞬間彼か笑った。

「真似すんなよ」

つられて私も笑う。

彼は体ごと私の方を向くと、ゆっくりと話始めた。

「俺らさ、気が合うじゃん?ほら、今みたいに。何も言わなくてもなんとなく波長が合うっていうか」

確かにそうだ。

だからわたしは彼のしてほしいことがなんとなくわかったし、彼はたまにエスパーみたいに私の気持ちを読み取ってた。

「だから今のまんまでも何も変わらないわけ。ゆうちゃんが話したくないなら俺は何も聞かない。でもゆうちゃんも『ちゃんと話さなきゃね』って言ってたでしょ?もしゆうちゃんが話したいなら俺はちゃんと聞くよ。それがどんな話でも、ゆうちゃんはゆうちゃんなんだから、俺は何も変わらない」

一気に言うと、彼はもう一口缶コーヒーを飲んだ。

何も変わらないか。

もしわたしが彼の彼女だったらなんて幸せな言葉なんだろう。

でもわたしたちの関係は・・・。

「何から話せばいいかわからない」

思ったより素直な言葉が出た。

多分彼に話してないことなんて、とても薄っぺらい身の上話くらいで、問題はもっと違うところにあるような気がした。

わたしは幸せになれない人間なんだ。

それは誰のせいでもない、自分の考え方の問題だってことはわかっているけど、それを彼に話すのは違う気がした。

だから取り合えず薄っぺらい身の上話を始めたんだ。
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幸せってなんだっけ? ©著者:M

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