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9章:四ー⑤ 思い出
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「専門学校に行きだしてから、外泊も増えて……今、何を意見しても聞かないのよ」
「そうですか……行くってメールはしたのですが……まだ帰って来てないですか?」
「さっき……イベントのミーティングがあるので今日も帰れないって連絡があったの」
「……わかりました。俺は、メールや電話じゃなく、きちんと会ってケジメをつけたかったので伺いました……もうメールアドレスも変えちゃってるみたいだし……『元気で。今までありがとう』って伝えてください」
深く頭を下げて、玄関を離れた。
未稀のお母さんは、俺の姿が見えなくなるまで見送ってくれたが……抑えようにも涙がとめどなくこぼれて……後ろを振り返ることが出来なかった。
未稀とは進む道が違った……曲がり角ではぐれてしまったんだ……そんな風に自分に言い聞かせた。
ずっと公式戦のメンバーになれない野球のことも……その時、ああ、きっと俺が進むべき道じゃないんだと割り切れた気がした。
それならーー自分が少しでも輝ける進路を取ろう!
大好きだった彼女を忘れるなんて出来ない。だけど大切な思い出としてフォルダに保存すればいい。
いつか削除できる日が来るまで。
いつか時が癒してくれる日まで。
俺の恋は終わった。
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アル、ジェンヌ ノ 物語 他三編 ©著者:七斗
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