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5章:四ー② 代打の切札
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六年生の昴は、澄ました顔でワインドアップから――ドン! と内角に速球を投げ込んで来た。
「ストラーーイックッ!」主審がコールする。
[手も足も出ない]とはこの事で。
トップバッターはいきなり入ったボールを眼で追って、キャッチャーミットを見るばかり。
「ふ、振らないかぁッ!」
監督の山梨がムキになって叫んでいる。バッターは監督の怒声に小さくなり、後二回は――振った。
「ストライクッー! バッター、アウトッ!」
相手チームの父母から拍手と歓声が起こり、バッターはすごすごとベンチに戻ってくる。
「な、何でも振るんじゃないッ!」
試合が始まったばかりだと言うのに、監督の頭からは湯気が立っていた。だって“振れ”って言ったの監督だしね。
ーーそれから昴の素晴らしいピッチングに翻弄されたまま、気が付けば健闘虚しく、
0ー2で負けたまま、最終回、7回表を迎えた。中学生までは体力と身体への負担を考えて試合は7回構成になっている。
うわ〜、終わっちゃうし。
さすがの俺もベンチで焦った。
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アル、ジェンヌ ノ 物語 他三編 ©著者:七斗
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