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3章:三、アル、オ年寄リト青年 ノ 物語 (2/39)

また桜の季節がやって来た。


【Lokken Beach】のインテリアも春一色に染められて、店の中では小ぶりな桜の木が……鉢植え……いや、根を張って可憐な花を咲かせている。

少し離れた駅前には小さな公園があり、吉野桜が群を成す。


毎夜、ライトアップされた枝の下で、ブルーシートの上に鎮座する人々が宴を催し、また一年に数日しか無い、その儚げな花が妖艶さで魅了する満開の週末には、酔っ払いの歌声や女達の嬌声、ハイテンションな笑い声が渦巻き、酒と体臭が入り混じった匂いが漂う。


花見帰りの千鳥足が、おや、こんなところにBARがあったのかと足を止めて扉を開く。


ある足は吸い込まれ、またある足はSAKURの創り出す空間に気圧されておずおずと扉を閉める。

それでもその時期は普段より大分と忙しくなり、常連でも諦めて踵を返す事も多い。



その日は、正樹(まさき)が始めて訪れた一年前と同じく小雨模様だった。


大学の教育学部に入ってはみたものの、教師になるにはゼミも厳しく成績表の評価も低く、自信を失い、自分が将来どんな道に進んで良いのかが全く見えなくなった。


そんな時、道すがらにこのBARを見付けたのだ。


ーーバイト代が入った時だけ顔を出して……もう一年になる。


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アル、ジェンヌ ノ 物語 他三編 ©著者:七斗

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