16章:１５ (4/4)

そんな優の気持ちが伝わったのか
健児もまた何も言わずに
優の長く艶やかな黒い髪を撫でた。


優の髪を撫でる
健児のごつごつとした大きな手は
優しさに溢れていて
いつか居なくなってしまうかもしれないと言う
不安を消してくれる。


心地よさに
ゆっくりと目を閉じても
健児の手からは
【君が好きだ】と伝わってくる。
その手が
今にも話し出しそうに感じた。


健児は
目を閉じた優を見つめている。
長い睫毛は優を艶やかに見せ
白い月明かりに照らし出された
その肌は陶器の様に滑らかだった。
柔らかい髪は
いつまで触っていても
飽きることは無いだろう。


昨日出逢ったばかりなのに
言葉に出来ない程
お互いがお互いを好きになっていた。


巡り逢う為に産まれてきた。
貴方を…貴女を…
探す為に産まれてきた。
二人は同じ事を思っていた。


今日より明日
明日よりその先は
もっと好きになっている。
そう思っていた。


何故なら
巡り逢う為に産まれてきたのだから。