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健児は玄関先に座っていた。
優は居間にあるキャビネットから
救急箱を取り健児の方へ向かう。
消毒液を取りだし
健児の傷を丁寧に消毒した。
さっき家を訪ねて来た時より
健児の表情が雲っている様に感じる。
優は恐る恐る
自分の疑問に思っている事を聞いてみた。
『健児さんですよね…?
健児さんは
どこから来たんですか?』
健児は宙を見つめ
しばらく黙っていた。
やがて
『自分は神風特攻隊でした。
フィリピンに向け飛行していて
目標に突撃したところでした。』
優は健児の話を黙って聞いている。
『確実に死んでいると思います。
自分は幽霊なんじゃないでしょうか?』
『今自分はさ迷う魂として
生まれ故郷に帰ってきた。
そんな風に感じているのですが…。
貴方は天国に居るという天使ですか?』
優はまるでお伽噺でも
聞いている様になっていた。
『健児さん、
わたしは天使ではありません。
それにここは天国じゃないです。』
『それではここは一体どこなのです?』
『ここは○○県の○○村で
間違い無いです。
健児さんは
死んでいると言ったけど…
貴方は今生きているじゃないですか。』
優は健児の胸に手を当てる。
確かに心臓は力強く
鼓動を感じさせた。
『ね?
健児さんは生きてる。
もしかしたら大きな事故かなんかで
記憶が混乱してるのかもしれない。
きっとそうですよ。』
優にそう言われると
健児は力無くうなづいた。
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