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18章:死の、目に映る
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18章:死の、目に映る
一歩、
また一歩と前へ進む。
不思議と心は澄んでいた。
足を踏み出す度、
さっきまであふれていた
悲しみも、
苦しみも、
憎らしい気持ちも、
次第に消えていくようだった。
一車線目を越えたとき、
自分の陰部が濡れていることに気付いた。
死を、
恐れているのだろうか。
人間、焦るとき濡れるものなのか。
それとも実は、
自分はマゾだったのかと考え、
鼻で笑った。
もう深夜になっているからか、
車はぜんぜん通らなかった。
そのせいか、
とても静かだった。
都会でも
こんなに静かな時があるのだ。
足は二車線目の半分くらいまで進んでいた。
ここで良いだろう。
向こうから小さな二つの光が見えた。
その光は次第に大きくなって近づいてくる。
光に包まれて
私はこの世から消える。
なんだかきれい。
そう思えた。
ありがとう、拓。
ごめんね、彩。
「もう、無理なの」
振り返って拓のマンションに向かって言った。
横からは光がすごいスピードで大きくなって近づいてくる。
静寂をエンジン音が破った。
.
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