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5章:メビウスリング (2/50)

朝食が喉を通らない。


耕作と恵美里には昨夜、離婚届けを役所に提出したと報告した。
すると耕作は恵美里が横にいるにも関わらず、無機質な表情でこう言ったのだ。


『それで、いつこの家を出て行くつもりだ? 一ヶ月だけ待ってやる』


耕作が前言を翻した。
以前は『住むところが決まるまでは』と言っていたのだ。
奈緒は耕作に抗弁したが、耕作は頑として譲らない。


耕作としては当然の言い分だった。
離婚に同意してからの奈緒は耕作の世話を全くしなくなったのだ。
炊事や洗濯はこなしているが、それは全て自分と恵美里の分の“ついで”であった。
洗濯物に至っては、耕作の物は丸めて部屋に放ってある始末だ。


仕事はともかくとして、住まいに関してのあては全く無い。
酒乱の父親がいる限り恵美里を連れて実家に戻る訳にもいかず、奈緒は頭を抱えた。


耕作が会社に行き奈緒がキッチンで皿を洗っていると、スエット姿の恵美里が二階の部屋から降りて来た。


「ねえ、ママ」


「なあに、恵美里?」


「うちら、これから何処に行くの? お爺ちゃんの処はやめてよね」


奈緒の手は止まり、水道の水がざあざあと食器を叩く。


「ーーこれから考えるよ。心配しなくていいから。それより、宿題は終わったの?」


「はーい」


恵美里は気の無い返事をして、また階段をとんとんと上がっていく。


(いちいち言わなくても分かってるよ……子供のくせに生意気に……)


奈緒は水道を止めると、ダイニングの椅子にガタンと座り込む。


陽介のあてが外れ、耕作からは期限を切られ、奈緒は切羽詰まった。


きっと陽介なら一ヶ月以内に手頃なアパートを手配してくれる。
そう信じてはいるものの、そこに住んでしまえば陽介と暮らす望みが完全に断たれることは自明の理だった。


いや、それよりも、昨夜言われた仕事と住まいを紹介するという陽介の言葉が、一晩経った奈緒には遠回しな別離の宣言に思えて仕方がなかった。


猛烈な寂しさが奈緒の心を支配する。


感情が先走るままに離婚した奈緒は、先行きの見えない孤独感に襲われ身震いした。



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darkness in the heart ©著者:タルドス

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