その日

仁が私に用意したのは




黒いワンピースだった

喪服みたいなワンピース




ピッタリだなって…思った



私にピッタリだ




着替えて部屋から出ると愁が待っていた




仁『……………』




私は仁に言った

嘘を。




夏『行ってきます』




帰る事は無いのに。




愁の車に乗る


ドキドキしていた




愁『…………元気だった？』




夏『…………うん』




私は精一杯明るく答えた


このまま時間が止まってしまえばいいのに



このまま…




愁『どこに行きたい？…………ほら、初めてのデートだし…はははっ』




愁も無理をしている




夏『……海…かな……うん、海に行きたい』




海に着くまでたくさん話をした




バカみたいな事だけたくさん話をした




２人とも。




愁はワンピースの事に触れなかった



私も…言えなかった




とにかく



楽しい話だけをした