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2章:四つの荷物
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家の近くのコンビニ前でタクシーを降りた加根子は、吸い寄せられるようにそのまま店内へと入って行った。
菓子パンや弁当などを次々にカゴに放り込み、レジへと向かったがなかなか店員が現れない。
次第に苛々してきた加根子はレジ台の足元を蹴って自分の存在を主張してみせた。
するとバックヤードから一人の若いアルバイト店員が慌てて出てきた。
「煙草…12番2つ」
小銭を放り投げるようにして支払いを済ませた加根子は店員をひと睨みしてから店を後にした。
セメントを固めただけの階段を6段だけ上り、錆の目立つ鉄製の扉に鍵を差し込む。
何足もの子供靴が散らばっている玄関、それらは全て爪先が破れていたり靴底がはがれていたりする。
加根子はその小さな靴たちを踏みつける形でサンダルを脱いだ。
居間の炬燵(コタツ)から覗く3つの頭、その全てに長いこと洗髪されていないであろう不潔な束感があった。
加根子は座椅子に座りこみ、テレビをつけたかと思うとガサガサと音を立てて、先程買ったコンビニ弁当を食べ始めた。
朝の情報番組の司会者がわざとらしく静かな声で幼児虐待のニュースを伝えている。
「毎度毎度このような事件を聞くと行政は何をしてたんだ!ってなりますよねぇ…はい、続いては芸能です!あの有名アーティストが噂の彼と遂にゴールインとなりましたぁ!」
ほら見たことか。
母親とその交際相手の男から虐待をうけていたという2才の子供が死んだからと言って、世間の関心は時間にして10分にも満たない。
その後の誰と誰がくっついたとか、誰と誰が別れたとか、視聴者からしてみればそっちのニュースの方が興味をそそる。
加根子はゴミと洗濯物に占領された不衛生な部屋で眠る我が子には目もくれずに黙々と弁当を食べ続けた。
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醜女 ©著者:小陰唇ふりる
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