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8章:冷たい雨
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8章:冷たい雨
翌朝...数時間の睡眠をとると涼也が先に目を覚ました。
となりには、小さな寝息をたてる優香がいる。
女と夜明けを迎えるのは10年ぶりだった。
そっと頬に触れる...
亡くなった彼女では無い。違う女がそこにいる。
不思議な気持ちだった...
ゆっくりと目を開いた彼女は、一瞬、涼也の存在に、気付き驚いた表情を見せ、昨夜の記憶を呼び起こしていた。
涼也(おはよう。)
優香(うん...)
まだ眠そうにしている彼女は体を起こすと目を擦りあくびをしている。
涼也(もう少し寝てていいよ?)
優香(今何時?)
涼也(8時半。)
優香(ヤバい...帰らなきゃ。)
涼也(今日は土曜日だよ。予定日あるのか?)
優香(家の事やらなきゃならないし...)
涼也(そうか...)
夢の時間は呆気なく過ぎ去り、太陽がのぼると昨日の彼女はいない。
涼也は帰ってしまう寂しさを押し殺し、まだ温もりの感じるベッドから体を起こした。
涼也(シャワー浴びていいか?)
優香(うん。私電車で帰るから、大丈夫だよ。)
涼也(いや、送ってく。少し待っててくれ。お前は?)
優香(大丈夫。家で浴びるから...。)
涼也(そうか。)
少し熱めのシャワーを頭から浴びる。
帰らないでくれ...
そう言えたらどんなに楽か。
家に来た事を後悔してるのだろうか、優香が少し素っ気なく感じた...。
バスルームから出ると彼女が帰り支度をしている。
崩れたメイクを直し、何やらバックの中をまさぐっていた。
sexが終わると直ぐに帰宅していた自分が、どんなに相手に淋しい思いをさせていたのかが、その時初めてわかった気がした。
涼也(おまたせ。行くか?)
優香(うん。)
寂しさを出さないよう平然を装いながら運転をする。
妙に気まずい空気が流れ会話が持たなかった...
涼也(ついたぞ。)
優香(ありがとうございました。お疲れ様です。)
そう言うと彼女はお辞儀をし、姿を消した...
彼女が見えなくなった景色が色褪せて見える。
深いため息をつくと、涼也は自宅まで車を走らせて行った...。
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