先生との出会いは、絵里が服飾専門学校で学んでいた時のことだ。


先生は年に2回程トレンド解説をしに学校へやってきた。絵里は誰も積極的に座りたがらない一番前のど真ん中の席を陣取って、毎回聴講を楽しみにしていた。


華やかなコレクション映像、かっこいいショーミュージック、そして先生の解説と独特の見解。


ただのトレンド解説ではない。ファッションとは何かを考えさせられるお話だった。それは学校における他のどの授業よりも有意義な内容だと感じていた。


いつも先生はどこかのハイブランドであろうスーツで決めていて、それを見るのもまた楽しみの一つであった。


その時はまだ絵里にとって先生は雲の上の存在であり、尊敬すべき人物の一人というだけで恋心を抱いていたわけではなかった。


きっかけは卒業間近に見に行った、東京コレクション会場でのこと。


大混雑の会場の入り口で並んでいた時、絵里たち他大勢が並ぶ入り口とは別の、VIPの入り口に先生が現れたのだ。学校外で先生を見かけたのはそれが初めてだった。