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53章:キス (1/1)

53章:キス

当時の二人の関係を敢えて定義するならば不倫関係に近かったが、人生に前向きなその男女には不倫カップルにありがちな湿っぽい部分が見当たらなかった。拓也には川に身を投げて心中を図る男女の気持ちが分からない。夏のビーチで水着姿の歩美と戯れたり、一緒に映画を観たり、何度もセックスしたりと想像は膨らんで行く一方であった。歩美と今の関係を続けていくことが出来たら、どんなに幸せなことだろう。拓也は思い切って歩美に東京に遊びに来るよう誘った。図らずも来月は拓也の誕生月であった。来月の自身の誕生日に合わせて一緒にディズニーランドに行こうと言うと歩美は迷う素振りを見せずに快諾した。また一つ拓也に楽しみが増え、東京での辛い単身赴任生活にも光明が差し始めたような気がした。それから暫く会話をして、店を出る前、歩美が化粧室に立った隙に拓也は会計を済ませた。戻ってきた歩美は拓也に礼を言い、二人は店を後にした。

真冬の外気は冷たかった。歩美の格好は短い丈のニットワンピースの上にストールを羽織っただけの薄着である。店から駐車場までは目と鼻の先であったが、歩きながら拓也は歩美と手を繋ぎ、その手を自分のダウンジャケットのポケットに突っ込んだ。来月東京で会う約束を取り付けたものの、二人の関係は已然何かの拍子に直ぐにでも壊れそうな脆い物であることを拓也は十分に認識していた。歩美の心を何としてでも繋ぎ止めておきたかった。歩美の車の前まで来ると、拓也は歩美を強く抱き締め、歩美の唇にキスをした。

「好きだよ。歩美は?」

「まだ分からん。」

「何で?」

「分からんもんは、分からん。」

妻子持ちでデリヘルの客だった男からの告白に歩美は本音で返答していた。拓也の告白も本音ではあったが、嘘でも良いから好きと言って欲しいという部分も少なからずあった。本気で好きになられたら最終的に傷付くのは歩美であり、拓也にとってもそれは見るに忍びない。だが歩美の返答に実直さを感じた拓也は、歩美のことがこの上なく愛しくなり、自分のことを本気で好きになって欲しいと願った。そして、もう一度歩美を強く抱き締めると唇にキスをした。およそ30秒、他に誰もいない広い駐車場でキスをした後、二人はそれぞれの車に乗った。歩美の車が駐車場のゲートを潜り抜けたのを確認してから、拓也はゆっくりと家路に向けて車を走らせた。
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無題 ©著者:阿久津竜二

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