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44章:川筋気質
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44章:川筋気質
歩美は拓也に道を尋ねることなくホテルの近くまで車を走らせた。ホテルの少し手前でビップエコーという電飾の派手なカラオケ店を見つけた拓也は、その店が大手のカラオケチェーンと関係あるのか気になって歩美に尋ねた。
「ビッグエコーじゃなくて、ビップエコーだって。名前パクって付けたのかな?」
「知らんよ。けど昔、友達と一緒に来たときはビッグエコーやったかもしれん。」
店のオーナーが、フランチャイズの本部と喧嘩別れした後、看板を少しだけ手直しすれば済むように、そんな屋号にしたのだろうか。拓也は川筋気質という言葉を思い出した。気性は荒いが、義理人情に厚い、筑豊人の性格を表した言葉である。都会から来た人間が自分たちのルールを杓子定規に押し付けるようでは、この地域では上手くやって行けないだろう。それはかつて仕事で何度も筑豊を訪れたことのある拓也の実感でもあった。
川筋気質と言えば、歩美の性格にもそれを彷彿とさせる部分があるように思えた。気性の激しい所はまだ見たことがないが、気遣いのできる女であるし、風俗嬢には珍しく自分から金やプレゼントをねだることもない。そんな歩美の性格だからこそ拓也は余計に惹かれていくのであった。
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無題 ©著者:阿久津竜二
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