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40章:ザナドゥ (1/1)

40章:ザナドゥ

正月三が日の後に拓也は3日間の有給休暇を取得しており、大晦日と有給休暇明けの土日を入れると9連休であった。その連休中、妻の実家に来ている拓也は別府から帰ってきた後も宗像大社に初詣に行ったり、初売りに合わせて福岡まで買い物に出掛けたりしながら、普段離れて暮らしている妻子と水入らずの時間を過ごしていた。その間も拓也の頭の中では、寄せては返す波のように歩美の事が浮かんでは消え、悶々とした気持ちは日を追うごとに膨らんでいった。それでも拓也は自分の気持ちを上手くコントロールしながら、折を見てメールで歩美に連絡を入れていた。年が明けてからの歩美は色々と用事があるらしく忙しい様子であったが、何回かメールをやり取りした後、金曜日の夜に会うことになった。

金曜日の数日前、いつものように妻子を後部座席に乗せてドライブしている途中、拓也の運転する車は穂波東インターの近くを通りかかった。ふと拓也が遠くに目を遣ると、国道200号線から少し奥まった所に、周囲の低層建造物と比べて一際大きな白と赤色の建物があることに気がついた。建物の上層部分にはXという文字が見える。ザナドゥという名前の、そのラブホテルは7、8年前に仕事で八木山バイパスを行き来していた頃にもあったような気もするが、記憶は曖昧であった。
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無題 ©著者:阿久津竜二

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