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37章:眠気
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37章:眠気
湯上りの拓也と歩美はそのまま休憩所に向かった。途中、拓也は施設内に宿泊用の部屋があることに気がついた。すっかりスーパー銭湯だと思い込んでいたが、宿泊も出来るらしい。
「泊まれるんだ。今日はここに泊まれば良かったかな。」
拓也が独り言のように呟くと、歩美は笑って受け流した。時刻はおそらく夜中の2時半を過ぎていた。
休憩所は畳敷きの大広間で6人掛けの座敷が数十席あったが、深夜とあって殆どの席は空いていた。閑散とした雰囲気の中、拓也たちは従業員を呼んで烏龍茶を二杯注文した。さっきから拓也が少し大人しくなっていることに気づいた歩美が聞いた。
「もう眠いやろう?」
「イヤ、大丈夫だよ。」
そう答えた拓也だが、今朝は6時半に起床してから、彼此20時間が経とうとしている。眠たくないはずがなかった。拓也は毎朝6時半に起床し、千葉にある社宅を7時前に出て、およそ1時間半をかけて電車に揺られながら東京駅に程近い銀行の本店に通勤していた。銀行内の出世コースに乗るためには必須条件と言われる本店勤務であったが、早起きも満員電車も人一倍嫌いな拓也にとっては毎日が苦行そのものであった。
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