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33章:スーパー銭湯
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33章:スーパー銭湯
深夜にも関わらず駐車場は車で混み合っていたが、施設の正面玄関
からそう離れていない場所に空いているスペースを見つけると、歩美は車をバックで停めようとした。歩美は「ホ」と発音するときのように口を軽く開けたまま、瞬きをせずにサイドミラーを見ながら徐々に車を後進させていく。その様子を隣で見ていた拓也は、意識が他の事に集中している時の歩美の表情も自分の好みであることに気がついた。反対に、もし拓也が車を駐車することになったとして、それを助手席で見ている歩美は自分の表情を気に入ってくれるだろうか。他人に聞かれたら笑われそうな空想が拓也の頭の中に一瞬浮かんだが、「着いたばい、行こう。」という歩美の声ですぐに吹き飛んだ。二人は車を降りて、施設の正面玄関に向かった。
正面玄関の真上には一際目立つ、巨大な提灯のようなオブジェがあり、提灯の内部を明るい光が灯している。万葉の湯の建物の外観は一見すると温泉旅館のようにも見えた。しかし、建物の中に入ると最初に下駄箱に靴を入れてから畳に上がり、その先の受付カウンターで料金を支払ってタオルやロッカーの鍵を受け取るシステムになっており、若干高級なスーパー銭湯という趣であった。
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