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30章:中途半端
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30章:中途半端
車で来ている歩美に合わせて拓也は烏龍茶を注文し、二人で乾杯した。
歩美はどんな男がタイプなのだろうか。それとなく拓也が話を振ると、歩美は良い父親になりそうな真面目な男よりも、多少ヤンチャでも面白い男の方がタイプだと言う。拓也は自分がそのどちらにも当てはまらないように思えた。
中学、高校時代、学業成績が人一倍優秀だった拓也だが、形に嵌まるのが嫌で、いわゆる優等生たちとは距離を置いて付き合っていた。そうかと言って親しい不良仲間がいるわけでもなく、部活動に打ち込むこともなく黙々と勉強一辺倒の毎日を過ごしていた。大学も名門校に入ったまでは良かったが、弁護士にも官僚にもなれず、たまたま内定を貰った銀行に就職しサラリーマンになった。
そんな拓也は自分のことをどっち付かずの中途半端な人間だと思っていた。だが中途半端な人間だからこそ、色々な立場の人の気持ちに寄り添うことができるというのはあながち嘘ではない。歩美と知り合って、今こうしてデートが成立しているのがそういう理由からだとしたら、自分の中途半端さも捨てたものではないと拓也は思った。
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無題 ©著者:阿久津竜二
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