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4章:インプレッション
目が合った瞬間、女はやや緊張した面持ちであったが、拓也の姿を見て予想していた以上に若いと思い安心したのか、幾分頬が緩んだようであった。
「・・・大丈夫かな?」
「もちろん。可愛いね。入ってよ。」
拓也の言葉は本心から出た言葉であったが、絶世の美女だと思ったわけではなかった。料金の安い店だということを勘案したうえで、期待を上回る容姿に思えたのである。
女の髪は茶髪のロングヘア。丸みを帯びた顔はやや厚化粧で、決して上手なメイクではない。持っているバッグや着ているワンピースも安物に見える。左手の甲にはワンポイントのタトゥーが入っている。二十歳前後に見えるその女は、どこか野暮ったく、決してお洒落な感じではなかった。それでも色白な肌と濃いアイラインを引いて付けまつ毛をした大きな目、そしてワンピースの胸元の谷間は拓也の興味をそそるのに十分であった。
「今晩は。だいぶ待ったでしょ?ゴメンなさい。」
「いや、全然大丈夫だよ。」
「旅行?」
「うん、東京から。」
「へぇ、お仕事の旅行?」
「いや、今日はプライベートで来たんだ」
二言、三言、会話をしながら、女は床に座り込み、バッグから携帯を取り出して、拓也に何分のコースにするかを尋ねた。
昼間、梓に現金を渡し、一緒に食事にも行ったため、財布の中はそれほど余裕がなかった。梓とのセックスを楽しんでからそれ程時間が空いていないということもあり、拓也は60分コースにすると答えた。
女は店に電話した。料金は指名料込みで一万二千円。拓也が梓と知り合ったときの店の料金は60分指名料込みで一万八千円である。それに比べると随分と割安であった。
拓也はずっと前に呼んだデリヘル嬢から、料金の安い店は客層が悪くて大変だという話を聞いたことがある。こうしてデリヘルを呼ぶ時は小綺麗な格好をして、紳士的に振る舞う拓也が、目の前にいる女に好印象を与えていたことは間違いなさそうであった。
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無題 ©著者:阿久津竜二
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