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9章:誰かいる
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「何匹産まれた?」
豚舎に現れた昭夫はまるで何もなかったかのように康夫に問い掛けた。
康夫は体を強張らせて十一という数字を告げた。
「もう遅いけん、お前は先に寝らんね」
逆らうと何をされるかわからない。
康夫はお産を終えたさよこの体を何度か撫でてから腰を上げた。
「握り飯があるけん、それ食ったら薬ば飲んではよ寝ろ」
康夫はコクンと頷いて豚舎を後にした。
翌朝、いつもより少し早く豚舎に行った康夫はさよこの乳首にぶら下がっている子豚の数を数えて首をかしげた。
「ひ、ひひ、ひひ一人いない」
何度数え直してみても子豚は十匹しかいなかった。
「どどどどどどこに、いいい行ったんだ?」
利奈の目の前に瀕死の状態で蠢く子豚がいた。
可哀想に両目には割り箸が深く刺さっている。
糞尿と血にまみれた小さな体は二度と起き上がることはないだろう。
利奈は弱々しく息をする子豚を黙って見ていた。
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豚の穴 ©著者:小陰唇ふりる
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