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2章:名前 (1/4)

2章:名前

クラブ通りを下り、センター街を目指して足早に歩いていく。
二月の寒空の下、息は白く、夜風の冷たさが露出した皮膚を刺している。


ー今夜は花の金曜日か…
小さくそう呟く私の声など、誰にも届かない。

このままでも客は探せるだろう。人混みの渋谷。2時半を回ろうとしているというのに、人の影と笑い声は絶えない。
イヤフォンを外し、喧騒の波に溺れながら、気力がなくなっていることに気付いた私は、漫画喫茶で始発を待つことにした。

チェーン展開しているその店を、何度か使ったことがある。
【サキモト ハルカ】と書かれたメンバーズカードを出し、フラットシートの部屋を選択する。

重い気持ちと身体を、一刻も早く休めたくてブースに向かう。
荷物を投げ込んで、ブーツを脱ぎ捨て、ブースの扉を静かに閉めた。


取り出した煙草に火をつけて、壁にもたれ掛かりながらパソコンの操作を悴んだ手で進めていく。

客を探すために登録した、出会い系サイト。
今日は出会わないつもりでも、後日の約束もあるため、サイト名を入力し、検索をクリックする。日々、それくらいでしか利用しない。


華やかに彩られたそのサイトにログインし、マイページを一通り眺める。


【夏奈さんのマイページ】

と表示されたページから、メールボックスを選択。
たまっていた客からのメールを選別して、必要なものだけ返信をしていく。



そうこうしているうちに、3時半を迎えようとしていた。

掲示板を眺めることにも飽き、トップページをスクロールして――

ふと、手を止めた。



【チャットルーム】


こんな出会い系サイトにも、チャットなど存在したのか、と思いながらも、興味本意でクリックしていた。

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東雲スプリット ©著者:志乃

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