4章:第一話-4:【創られるストーリーの中で】 (2/31)

篤哉は、ひとの持つ。


“明と暗”を併せ持つ男だった。見事にコントラストをつけて。



私は彼の創るストーリーの中に迷い込む。朝も夜も。どんな時でも、篤哉の中にオフタイムは無く、常にオンタイムを生きる。


彼は素の自分を畏れ、自分で創り上げた“篤哉”を演じる。けれど、黒いオーラは演じている舞台に時として降り立ち……計算を崩す。そして狼狽えて、自分の殻に閉じこもるのだ。


それは突然にスイッチが切り替わった。


何の気無しに聞いていた、彼の過去の話の中に、その明暗は現れていた。そう、早目に気付いていれば……。



こんなに傷つくことは防げたと。



後でそう思った。