3章:第一話-3:【叡智】 (2/21)

「出身はどこなの？」



あの日、居酒屋で篤哉に助けられた私は、彼の存在感に呑み込まれ、言われるままにメールアドレスを交換した。


次の週末に新宿で会おうと言われ、今、ダーツバーに来ている。
しかし、彼は片隅に置かれたビリヤード台を目指した。


ひし形のラックに、慣れた手つきで球を並べる。
1番を先頭、9番を中央に置き、カラーボールを組んでいく。そしてラックを外してキューを手に取った。



「ナインボールな。知ってるか？」



獲物を狙う、あの鷹の眼が彼に宿り、キューが鋭くブレイクショットを貫く。




ーースパーーーーン！