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2章:第一話-2:【篤哉】 (2/16)

篤哉(あつや)と出会ったのは……。


梅雨が開けたばかりの、蒸し蒸しする夏の在る夜だった。


その頃、私は同僚の離婚相談にどっぷりと浸かっていた。


同僚、岡島(おかじま)は会社に同期入社した男性で、とても気が合った。しかし求める異性への価値観が異なり、互いに恋愛関係になる由は皆無である。けれども不思議と話が合うので、新卒で入社して10年。
男女の枠を超えて、親友関係になっていたのだ。


私は彼より先に結婚し、そして離婚した。


離婚は、結婚の10倍の労力が伴う。なんとか乗り越えた私を、同僚は頼った。彼の苦悩もよく解り、週末毎に二人で呑みに行っていた。岡島が「結婚するんだ」と、私に嫁を紹介した時……即座に直感で“これはダメになるだろうな”と感じた。そしてその通りになる。理由は“嫁の浮気”だ。


心痛に顔を歪めながら、岡島は杯を重ねる。



「岡ちゃん、もう呑むの止めなよ。だからさぁ、私、結婚する前に止めたじゃんよ。無理があるって」


「うるせぇ。莉子は真っ直ぐ過ぎてダメなんだよ!」


「は? 私? 今は私の話じゃ無いでしょ、だからさぁ」


「だから! 莉子には不思議さが無いの! “不思議”が無いと人間、つまんないでしょ? お前は裏表無さすぎ」



岡島は、“掴み所の無い女”が好きで……しかしそれは、彼の真摯な生き方には向かなかったのだ。

彼は……“真面目”が故に“奔放(ほんぽう)”に惹かれた。


人間は、常に“無いものねだり”をする。




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【荊棘】(おどろ)外伝・二題 ©著者:七斗

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