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19章:慈愛
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ガチャリ、ガチャッ…バタンッ
とっ、とっ、とっ
「ただいま」
「お帰りなさい。DVD、取り出せた?」
「あぁ、ここにある。
防犯カメラも良い物を買ってきた。
今から早速玄関先に取り付けるよ」
「今から?
明日から会社に復帰するんでしょ?
動きっぱなしで疲れも溜まってるでしょうし、今日はもう休めば…?」
「そりゃお互い様だろう。
お前だってヤワじゃないと言いながら休まずのままじゃないか。
そりゃ責任もあるし、
これ以上穴を空ける訳にもいかんから一旦復帰はするが、刻子を守る為にすべき事なら、少々寝不足になろうが真っ先に片付けた方がいいに決まってる。
後回しにして後悔するハメになってからじゃ遅い」
「…そうね。
一番苦しんでるのは刻子ですものね…」
「刻子は?」
「上でウルトラマンを抱いて寝てるわ。
今日はひさこさんて方に庇って頂いて、
パンツとパジャマを用意して頂いたり、
怪我の手当をして頂いたり、
随分手厚い保護を受けたみたい…」
「ひさこ…か…」
「ええ…寝る前にその方に買って貰った
お菓子を食べたとも言ってたわ」
「…体をこの手に触れられて、
腕で抱き締める事が出来るのに…
確かな鼓動と、ぬくもりを感じて…
間違い無くこの瞬間、
私達の側で生きてる事が明確なのに…
地獄に落ちただなんて…
どう現実として受け止めろと云うんだ…」
「…私も、未だに信じられない…」
「…須賀さんの説明が狂言だとするなら…
きっと打つ手立ては見つかる筈だ…。
明日はなるべく早く帰る。
そこから揃って警察へ行こう…。
防犯カメラ、設置してくる。
お前はもう寝ろ…」
「嫌よ…私も手伝うわ」
「マニュアルを読みながらの機械のパーツの組み合わせや、
配線の接続作業なんだからややこしいぞ?
指示を出して動いて貰うより一人で集中する方が効率がいい事もあるさ。
いいから先に休めって。
気持ちだけで充分だ。ありがとう」
「…じゃあ夜食を作って冷蔵庫に入れておくわ。無理はしないで…」
「あぁ。おやすみ」
「おやすみなさい…」
チュッ…
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刻子 ©著者:池沼
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