ノリの嫌がらせ事件も解決して、ゆうと私は数ヶ月間、平穏な日を過ごしていた。
最初の約束通り、たまにはデートをしたり、お互いの家族や友達とも会ったりして、小さなケンカはあったけど 次の日には仲直りができる程度のケンカだった。
ケンカをする度に、チカから聞いた暴力の事が頭をよぎったけれど、そんな事は一度もなく、暴力に訴えるのも、そうじゃないのも どっちも ゆうという人間だと、チカの事を切り離して考えられるようになった。
数ヶ月という期間は ゆうを知るという意味では、私にとって すごく大切な時間だったように思う。
ケンカをした日は、背を向けて丸まって寝るクセがある私を包んで寝てくれる。
一緒にテレビを見ると手を繋ぐクセ。
たまに食事を作ってくれて失敗すると ｢はるな、大ピンチ｣と大げさに言う事。
二人でいる時間を大切にしてくれて いつも一緒にいてくれた。
恋人であり、父でもあり、兄でもあり、弟でもあり、子どもでもある。
ゆうは 私にとって そんな存在だった。