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22章:初愛
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青々と茂っていた街路樹の葉が、所々赤や黄色に染まりだすと
裏駅にあるラーメン屋の「かき氷」と書いてある旗が心なしか色褪せて見える。
真っ黒に光るプレジデントから降りた女も、薄手のカーディガンを羽織っていた。
ふくよかな胸の谷間には純金のプレートネックレスが揺れていて
ブランドの長財布を持つ手指のネイルは、大小様々な石でキラキラと光っている。
その女の名前は、サクラ
工藤の子を妊娠している、二十歳の愛人だ。
サクラは、この広い大都会で一番高級だと言われている、老舗クラブのホステスだった。
ロシア人の祖母を持つサクラは、まるでおとぎ話の中のお姫様みたいに美しく
158センチの身体に、細長い手足。
ウエストの位置は、日本人の平均より約10センチも上にあり、誰よりも長い足を組み直す姿には、皆が注目した。
カタギの経営者連中との付き合いで、たまたま老舗クラブにやってきた工藤は、一目でサクラを気に入り、店に通いはじめた。
しかしサクラは簡単な女では無く
工藤がどんなに口説いても、なかなか振り向かなかった。
金を使っても
権力を与えても
優しさを見せても
サクラは興味を示さない。
何度誘っても応じないサクラに対して、工藤はついに怒り、サクラに対して大声で怒鳴り付けた。
しかし
ヤクザ者ですら萎縮してしまう工藤の唸りにも、サクラは怯まなかった。
店内がシーンと静まりかえる中、サクラはニッコリ微笑んで言った。
…やっと、本当の感情を見せてくれたね…
その言葉を聞いた工藤は、その瞬間
気が強く生意気なサクラを本気で好きになったのだ。
そう、
本気で…。
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