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10章:平凡 (2/5)

冬の寒さは厳しくて、昼間の景色さえ灰色に染めた。
冷たい風が吹けば、人々は背中を丸めて足早に歩く。
大きな街でも、それは同じ事だった。


ヒナと和樹は
身体の関係も無いまま、同棲生活を続けていた。



ドライな関係だが、二人は親しくなった。



その間
恭から何度も電話やメールがあったが、ヒナは一切連絡を取らなかった。

そんな時は
心がえぐられる様に痛み、死んでしまいたくなるくらい寂しい気持ちになった。



「俺が悪かった」
「戻ってきてくれ」
「愛してる」


恭は、始めは優しい言葉のメールを送ってきたが、
ヒナが戻らないとわかるといよいよ牙をむきだした。



「裏切り者」
「お前を絶対に探して半殺しにしてやる」
「金取ってやる」


ヒナは悲しかった。

しかし、こんなメールを見ても、まだ恭の事を心配している自分がいる。

どんなに強がっていても、本当は寂しがり屋なのを知っている。

戻りたい訳ではないが、ヒナの心は恭に縛られたままだった。



こんなに苦しい思いはもうしたくない。


ヒナは恭を忘れるために、携帯電話の番号を変えた。




和樹はヒナに何も聞かなかったし、ヒナも本当の事情を話さなかった。

恭の事を話せば、また思い出し、
辛くなり苦しむのがわかっていたからだ。






ヒナは
あの日涙をこらえて貴金属を売った金で、服を買い
和樹がバイトしているスナックで働き始めた。


年配のママに20代後半のホステスが三、四人いる程度の、小さなお店。

今まで不良ばかり見てきたヒナにとって、
一般人の女や客は、とても優しい雰囲気で安心出来た。


酔った女の客から、軽い嫌がらせを受けても
所詮カタギの世界。

女同士でも殴り合う場面を見てきたヒナにとっては、そんな女の嫌がらせなんて、鼻先で一つ笑う程度のものだった。





仕事が終わり
後片付けをしている和樹を待つ間、ヒナは決まって空を見上げた。


電話番号を変えたあの日以来
当たり前の事だが、恭からの連絡は無くなった。



恭はどう思っただろう。

私を恨んでいるのかな。



そんな事を考えながら、ヒナはいつまでも夜空を見つめていた。


溢れ出る涙を拭えば
瞬かない星が一つ、ヒナの瞳の中で輝いた。
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透明な世界 ©著者:品川

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