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9章:新しい街 (5/5)

少ない会話の中で
ヒナの行き場が無いと知った和樹は、自分の部屋に来る様に言った。


ヒナは
どうせ風俗で働くつもりだし、身持ちを固くする理由も無いため、何の迷いもなく和樹に着いて行き、住むところを手に入れた。



10分くらい歩いた静かなところに、和樹のアパートはあった。

お世辞にも綺麗とは言えないアパートで、ヒナは恭と初めて待ち合わせをした売春宿を思い出した。




和樹はヒナを部屋に案内すると
友達の所へ行ってくるから、部屋は自由に使って
と、どこかへ出かけて行った。


身体と引き換えだと思っていたヒナは少し驚いたが、とにかく疲れきっていたため、和樹の部屋で身体を休めた。



知らない場所
知らない人


たまに踏み切りの音が聞こえるこの部屋で、ヒナは心の置き場所を探した。

しかし、どんなに探しても、
そんな場所は存在しなかった。



バックの中には、恭と暮らしていた部屋の空気がまだ残っている様な気がして、ヒナは意味もなくバックの中身を手に取った。


しかし、何をしてもヒナの心の傷は疼くだけだった。

悪い事を思い出せば、恐怖で身体が震え、絶望的な気分に襲われ
良い事を思い出せば、淋しさで胸が苦しくなった。



あんなに辛い目にあって、やっと逃げてきたのに
どうしてこんなに寂しいんだろう…


辛い……。



身体を丸め泣き出すと、恭に蹴られたところが 
ズキッと痛んだ。
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透明な世界 ©著者:品川

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