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9章:新しい街
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小さな氷の粒たちは
太陽が近づいてくるにつれて、少しずつ消えて無くなっていく。
それでも身体が感じる寒さは変わらず、ヒナはベンチに座ったまま震えていた。
街灯が消え、空はだんだん明るくなってきた。
電車も動き始め、街は目を覚ます。
いつまでもここにいても仕方がない…
ヒナはかじかんだ身体で立ち上がった。
体温で温まっていた場所に、冷たい空気が染み渡る。
取り敢えずラブホテルで少し眠り、今後の事はそれから考える事にした。
10分も歩けば街中から離れ、裏駅の少し静かな道にでた。
下を向きながらトボトボと歩くヒナの髪は、風に揺れていた。
そんなヒナの髪に見惚れた男がいた。
男の名前は和樹。
近くの大学に通う、二十歳の大学生だ。
和樹は、駅前のスナックでボーイのバイトをしていて、その帰り道にヒナを見つけた。
華奢で寂しげなヒナから目が離せなくなり、和樹は思わず声をかけた。
振り向いたヒナの髪は、やはり風に揺れていた。
どこからか、洗濯洗剤の匂いがした。
遠くから、踏み切りの音が聞こえた。
「朝」が近づいてくる…
ヒナはそんな事を考えながら、たたずむ和樹をボンヤリと見つめていた。
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