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5章:粉 (2/6)

ルカを切ってから、金を稼がなくてはいけなくなった恭は、手っ取り早く稼げる覚醒剤の売人になる事にした。


知り合いのつてで、顧客の番号が入った飛ばしの携帯と、グラム単位で重さを量る機械を手に入れた。


肝心の覚醒剤は、簡単に低価格で手に入る。

まとめ買いをすれば、あとは飛ばしの携帯が鳴るのを待つだけだった。



いろいろな人間から、注文の電話がかかってくる。


不良
不良の女
若い風俗嬢
売れないホスト
不動産業の社長
中年の職人
パチンコ好きの主婦


注文が入ると、恭はまだ結晶状態の薬を丁重に計り、パケと呼ばれる厚手のビニール袋に詰める。

注射器はだいたいサービスで一本つけた。


そして指定した場所で客と待ち合わせをし、金と、茶封筒に入ったソレとを交換した。


そんな時は、だいたいヒナも一緒だった。



薬を買い求める人間たちは、意外にも太った人が多かった。
しかし皆顔に赤い湿疹があって、キョロキョロと異常に周りを警戒していた。


恭が忙しい時は、ヒナが売人になった。

プリウスで待ち合わせ場所まで行くと、ほとんどの客は、いつもと車が違うと、隠れてなかなか出てこなかった。
そんな時は、恭から預かった飛ばしの携帯から客に電話をかけて、一から説明しなくてはならなかった。



恭は、売人の仕事が起動に乗る頃には、組でもご法度なこの薬に対して少なからず興味が湧いてきた。



人生の落ち目は、こんなにも簡単に訪れてしまう……
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透明な世界 ©著者:品川

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