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4章:本妻 (2/5)

昼間は春で、夜中は冬。
そんな季節を秋と呼ぶ。


夕焼けに赤く照らされた薄い雲が、まだ淡い月を隠すように流れている。

白い雲は、所々いろいろな茜色に染まっていて、それはまるで夢の世界みたいに綺麗だった。 


キラリと光るのは、飛行機の光。

あの小さな飛行機が、あそこからここまで来る間に、恭はこの部屋に帰ってくるだろうか。


外の空気は肌寒いけど、まだここでこうして恭を待っていたい。

ベランダに立つヒナは、あの門から黒いマジェスタが見えるのを、何度も何度も想像した。



もしかしたら、今日は特別な日になるかもしれない…。


黒いマジェスタが見えた時、ヒナはたまらずに玄関から飛び出し、急いで表に出た。


車から降りた恭は、ヒナに気付くと苦笑いをして言った。


「そんなに心配するなよ。」

ヒナは恭の次の言葉を聞いた時、ふと空を見上げた。
さっきの飛行機は、ずっと遠くに光っていた。


日が沈みかけると、夜のにおいに包まれる。

冷たく澄んだ空気を色にするなら、きっと濃い青色だろう。




離婚成立した




恭の言葉は、ヒナの心の一番深い部分に、鍵をかけて大事にしまわれた。



何か言いたそうな恭の顔には、薄赤い傷があった。
引っ掻き傷だろう。


恭がヒナに手を差し出すと、星たちが一斉に煌めいた。

まるで

シャラララ……

と、星がぶつかり合う音が聞こえてきそうな、そんな夜の始まりだった…


恭の手をとると、あまりに暖かく大きかったから、

ヒナはうつむいた…。
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透明な世界 ©著者:品川

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