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3章:錠剤
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ある日、恭はマンションに帰宅するなり茶封筒をヒナに渡した。
「ヒナちゃん、試してみようぜ。」
ヒナが不思議そうに茶封筒の中を覗くと、丸まったティッシュが見えた。
丸まったティッシュの中には、緑色の錠剤が2粒包まれていた。
これ何?
と聞くヒナに、
バツ
と、恭は答えた。
バツとは違法のドラッグだが、服用すると、フワフワと気持ち良く、幸せな気持ちになるらしい。
恭が、仲間の事務所当番を代理したお礼にもらったのだが、大学生などの若いカタギの人間は、一粒5000円で買うらしい。
覚醒剤より依存性も少なく、組の人間も何人かは試した事があるそうだ。
ヒナと恭は、その得体の知れない薬を一粒飲んだ。
口にいれた瞬間、鋭い苦味を感じたが、飲み込んでしまえば何ともなかった。
「?まだ何ともないね」
と笑うヒナ。
二人はくっついてソファーに座り、薄型テレビの電源をつけた。
フワフワのソファーの横には小さな空気清浄機があり、それはたまに機械的な音を出した。
恭と触れている部分が暖かく、ヒナはウトウトと目を閉じる。
外からは子供の声が聞こえてきた。
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