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1章:出会い (2/4)

とある小さなパブ

客の送り出しのため、外に出てきた女は思った。

真夏の夜は明るい…


女は客を見送ると、高いヒールを鳴らしながら少し歩き、酔いを冷ます様に立ち止まり空を見上げる。

一番星が瞬けば、細い足首のアンクレットもキラリと光った。


小さな身体はコスモスみたいに華奢で、長くて亜麻色の髪はストレート。所々に金色のメッシュが輝く。


その痩せっぽちな女の名前は「ヒナ」
歳は二十歳。


彼氏と別れたのをきっかけに、地元のパブで働き始めて、もうすぐ一年になる。
ようやく別れた彼を忘れ毎日が楽しい。
そんなヒナに、運命の出会いが訪れた。


男の名前は「恭」
筋者の男で、歳は三十。


恭を始めて見た時、ヒナは恐怖に似た感情に襲われた。

恭の短髪が、まるで闇のように真っ黒だったから。

恭の瞳が、まるで爬虫類のように無表情だったから。

そして、恭の笑顔が、まるで肉食獣のように攻撃的だったから…。



ゲーム機の集金に来た恭は、怯えながらも自分を見つめるヒナの存在に気付いた。

「香水シャネル?」


低く響く恭の声を聞いて、ヒナはただうなずいた。


ヒナは、吸い込まれる様に恭と瞳を合わせた。


恐い。
でも話したい。

知りたいし、近づきたい。
でも、怖い。



恭も、ヒナから目が離せなかった。

病的な程白い肌に、透ける様な茶色い瞳。


他の女と、何となく違う…。



エアコンから漏れる水は、チロチロと脇道へ流れていく……


そんな蒸し暑い、夏の夜だった。
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透明な世界 ©著者:品川

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