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28章:蛍
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28章:蛍
八月。開いた窓から吹きこんでくる風と共に、微かに蝉の鳴き声が聞こえる。時計は午後六時を回ったところ。陽はそろそろ沈む準備を始め、ラジオから流れて来る天気予報によれば今夜も熱帯夜だそうだ。
僕を含め三人を乗せた軽自動車は、川沿いに伸びる一車線の県道を下流域から中流域に向かって走っていた。運転席にS、助手席に僕、後部座席にK。いつものメンバー。ただKの膝の上にはキャンプ用テント一式が入った袋が乗っていて、車酔いの常習犯である彼は身体を横にすることも出来ず、先程から苦しそうに頭を若干左右に揺らしている。
僕らは今日、河原でキャンプをしようという話になっていた。Kが持つテントの他にも車のトランクの中には食料や寝袋、あとウィスキーを中心としたお酒等も入っている。
夜の川へ蛍を見に行こう。
言いだしっぺはKだった。何でも、彼は蛍の良く集まる場所を知っているらしい。
意外に感じる。Kはオカルティストで、いつもならこれが、『幽霊マンションに行こうぜ』 やら、『某自殺の名所に行こうぜ』 となるのだけれど今回はマトモな提案だったからだ。
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