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8章:公衆電話の夜
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8章:公衆電話の夜
ことの始まりは、ある夏の夜。深夜十一時を過ぎた頃に突然来た、友人Kからの一通のメールだった。
――これから電話来ると思うけど。それ、俺だから――
僕はその時、自宅のベッドの上で大学の図書館から借りてきた本を読んでいた。Kがこんな時間に電話してくること自体は、まあそれほど珍しいことではないのだけど。いちいちメールで事前告知をしてくるのが気になった。一体、何の話だろう?
そんなことをぼんやり考えていたら、ぶうーん、と蜂の飛行音の様な音を立てて携帯が振動した。Kからだな。しかし、携帯の画面には、Kの名前の代わりに、『公衆電話』と書かれていた。
はて、と思った。これがKからの電話だとして、どうしてKはわざわざ公衆電話から僕に電話を掛けてきているのだろうか。先程メールが来たのだから、携帯は持っているはずなのに。
しかしまあ。考えても分からないので、僕は読みかけの本を置いて、電話に出た。
「……もしもし?」
『おせえ。早く出ろよおめーよ』
確かにそれは、Kの声だった。
「こんな夜中にどうしたのさ。それに、そこって電話ボックスの中?」
『ゴメーイトゥ』
「何でそんなとこから掛けてきてんのさ?」
と、訊いてみるは良いが、実は僕にはその答えが半ば予想できていた。Kがこういうことをする時は、必ず、オカルトがらみのあれこれなのだ。
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