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5章:吊る這う轢かれる
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おそるおそる、車の下を覗くが、そこには何もいない。
「こいつ……」
Kが呟く。
「……轢きやがった」
「あん? ああ、そういや妙な手ごたえがあったな。でかいカエルでもつぶしたか?」
僕は、何も言えないでいた。KもSをまじまじ見つめるだけだった。
そんな僕らに、Sは怪訝そうな顔を見せ、
「どうしたお前ら。なんかあったか? ……ま、何を見ても聞いてもだ。そりゃ幻覚に幻聴だ。ほら、乗れ。もう帰るぞ」
僕とKはもう一度顔を見合わせ、お互い何も言わずに車に乗り込んだ。
それは、蛙とコオロギの鳴き声が響く、夏も終わりかけたある夜の出来事だった。
【えんd】
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