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5章:吊る這う轢かれる
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5章:吊る這う轢かれる
それは、蛙とコオロギの鳴き声が響く、夏もおわりかけたある夜の出来事だった。
「……この家だってよ。出るって有名な家」
僕とKは、その二階建ての一軒家を、周りをぐるりと囲む塀の外から眺めていた。
風は存外に冷たく、そういう季節はもう過ぎたのだと感じる。なのに、僕らはまた肝試しに来てしまっていた。僕とKとS、いつものメンバーだ。
発案者はKだ。奴のオカルト熱は季節に関係なくいつでも夏真っ盛りらしい。
「二階あたりに女の霊が出るって噂。今はー……見えねえけどな。窓に映るらしいぜ」
Kの言葉に、僕は二階の窓を懐中電灯で照らした。Sはというと、道の脇に停めた車から出てこず、運転席側の窓から、右肩と頭だけを出してつまらなそうに家を眺めていた。
「おいS、出てこいよ。なに一人だけ車乗ってんだよおめーはよ」
Kが言う。Sは大きなあくびで返す。
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